実務の中身が分かるケアマネジャー向けのアンケート結果について

介護保険最新情報Vol.977 「居宅介護支援における業務負担等に関する調査研究事業(令和2年度老人保健健康増進等事業)」の報告書について(WAMネットにリンク)のアンケートの結果を引用抜粋しています

研究事業の報告書は321ページと量が多く、読むには時間がかかるので、報告書の中でケアマネジャーの実務の参考になるアンケートデータやポイントを抜粋して紹介していきます





研究事業を元に書類・事務手続や業務負担等の取扱いを検討

ケアマネジャーの文書量の多さや業務負担は以前から厚生労働省の会議で議題に挙がっていました

今回、(株)三菱総合研究所実施の調査研究事業において、現場の実践者を中心に委員会が設置され、居宅介護支援における業務負担の軽減等を通じた環境整備を図る観点や、介護支援専門員を取り巻く環境や業務の変化を前提に、質の担保を図りつつ、対応可能な具体的かつ実質的な業務負担の軽減等の議論がされ、介護保険最新情報 Vol.959「居宅介護支援等に係る書類・事務手続や業務負担等の取扱いについて」の通知につながっています

リンクはこちら(WAMネットにリンクします)→介護保険最新情報 Vol.959「居宅介護支援等に係る書類・事務手続や業務負担等の取扱いについて」

業務負担軽減に向けた議論の目的

本事業では、現場の実践者を中心に委員会を設置し、居宅介護支援における業務負担軽減等を通じた環境整備を図る観点や、ケアマネジャーを取り巻く環境や業務の変化を前提に、質の担保を図りつつ、対応可能な具体的かつ実質的な業務負担軽減の議論を行い、運営基準の改定や様式の記載例・解釈通知・事務連絡・Q&A 等の発出につなげるためのとりまとめを行うことを目的に実施した

引用:株式会社 三菱総合研究所 居宅介護支援における業務負担等に関する調査研究事業報告書 URL:https://www.mri.co.jp/knowledge/pjt_related/roujinhoken/dia6ou000000qwp6-att/R2_022_2_report.pdf

委員会での話し合いが、4月からの法改正、様式変更にもつながっている元になる事業で、ケアマネジャー向けのアンケートやヒアリング調査と計8回の検討委員会が開催されています

令和元年12月の第89回社会保障審議会介護保険部会の介護保険制度に関する意見の中でも既にケアマネジメントの見直し点が挙がっていました

  • 高齢者の多様なニーズに対応した自立支援に資する適切なサービス提供の観点から、ケアマネジャーがその役割を効果的に果たしながら質の高いケアマネジメントを実現できる環境整備を進めることが必要
  • 医療をはじめ、多分野の専門職の知見に基づくケアマネジメントが行われることが必要
  • 地域ケア会議の積極的な活用などケアマネジャーが専門家と相談しやすい環境の整備
  • インフォーマルサービスも盛り込まれた居宅サービス計画(以下「ケアプラン」という。)の作成を推進していくことが必要
  • 公正中立なケアマネジメントの確保や、ケアマネジメントの質の向上に向けた取組を一層進めることが必要
  • ケアマネジャーの処遇の改善等を通じた質の高いケアマネジャーの安定的な確保や、事務負担軽減等を通じたケアマネジャーが力を発揮できる環境の整備を図ることが必要

「介護保険制度見直しへの意見」へのリンクはこちら→厚生労働省ホームページ 第89回社会保障審議会介護保険部会

令和元年で議論されていた内容は令和3年の居宅介護支援の法改正や通知に反映されています

処遇の改善等を通じた質の高いケアマネジャーの安定的な確保については実現されませんでしたので、寂しい限りです

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ケアマネジャー実務のアンケート結果

報告書はケアマネジャーの実務において、契約書や重要事項説明書の説明の手間や介護負担割合証等、行政への書類取り寄せの労務など細かい業務の削減可能性についても話し合われ、令和3年度の改正につながっています

読むと今回の法改正の背景が分かるので、時間がある方は読んでみてもいいと思います

今回の記事ではケアマネジャーの実務に関わる部分のアンケート結果を中心に抜粋していきます

サービス担当者会議の1回あたりの所要時間

サービス担当者会議の1回あたりの所要時間について新規のケアプランの場合をみると、「平均的な場合」は平均 45.8 分に対し、「所要時間が特に長い場合」は平均 77.2 分であった

引用:株式会社 三菱総合研究所 居宅介護支援における業務負担等に関する調査研究事業報告書 URL:https://www.mri.co.jp/knowledge/pjt_related/roujinhoken/dia6ou000000qwp6-att/R2_022_2_report.pdf

新規ケースの場合なので、関係性の構築が必要ですし、利用者や家族も初めての場合も多く、質問も多くなるため、アンケート程度の時間はかかるイメージです

ただ、実際の実務は、

  • アセスメント情報を入力して担当者会議前にはプラン原案を作る
  • 関係機関や家族と日程を調整
  • 担当者会議前後には移動時間がある
  • 事務所に戻った後も担当者会議の要点をまとめる
  • 提供表等を事業所にファックスをする
  • 場合によっては上司に報告もする

等、担当者会議前後に時間をかなり費やしています

相談援助技術だけでなく、事務処理や日程管理の能力が問われる仕事ということが分かります

業務効率だけ考えれば、ICTを活用してテレビ会議などすれば、移動時間や電話以外の日程調整も便利なのかもしれませんが、対人援助職としては、非言語的なサインも大事にしたいので、デジタルばかりだとマイナス面もあるような気もします

デジタルの面ではタブレット等でサービスの様子を動画等で紹介できたり、料金のデータをすぐに提示、利用者のスマホに転送、訪問時にある程度、介護ソフトに記録できたりすると個人的には効率化や説明の質の向上につながりそうな気がします

モニタリング業務の現状

1か月に2回以上の頻度でモニタリングを行う利用者の割合をみると、「1~2割未満」または「2~3割未満」と回答した事業所があわせて 67.4%であった。

モニタリング記録の方法について、「訪問時にメモをとり、事業所等に戻ってからモニタリング記録を作成」と回答した事業所が 97.7%だった。また、「訪問時にメモをとり、事業所等に戻ってからモニタリング記録を作成」する場合、「紙にメモを取り、パソコン等でモニタリング記録を電子入力」と回答した事業所が 91.1%であった

引用:株式会社 三菱総合研究所 居宅介護支援における業務負担等に関する調査研究事業報告書 URL:https://www.mri.co.jp/knowledge/pjt_related/roujinhoken/dia6ou000000qwp6-att/R2_022_2_report.pdf

40件近く担当する場合、2割だと8名の方には月2回以上訪問していることとなります

介護認定の方だけ担当している場合、1か月に50件弱くらい訪問していることもあるかもしれません

逓減制により45件持つ居宅介護支援事業所も出始めるため、長期休暇も難しい感じです

有給も消化するよう労働環境も変わってきていますが、休むことによって仕事が回らず、精神的に負担が生じてしまうようであれば本末転倒な気がします

記録の仕方もほぼ100%事務所に戻り、記録をしている現状があります

訪問時に記録する場合はタブレットもしくはノートパソコンのようですが、介護ソフトを導入している場合が多いようです

非言語な部分の観察も必要なため、訪問時に記録するのは適さないのか、環境的な要因か分からないですが、現状の対応では手間の多さも感じる所です

報告書では音声録音や動画などの保管についても意見が出されていました

まだ違和感が少しありますが、効率化の選択肢は多くなってほしい所です

ケアプランの交付

ケアプランをサービス提供事業所に交付する際の問題点や負担が大きい内容について、「サービス提供事業所が多い場合、交付に手間がかかる」と回答した事業所が 64.4%と最も多く、次いで「個別サービス計画書との連動のため、交付のタイミングを急ぐ必要がある場合がある」が 53.3%であった

株式会社 三菱総合研究所 居宅介護支援における業務負担等に関する調査研究事業報告書 URL:https://www.mri.co.jp/knowledge/pjt_related/roujinhoken/dia6ou000000qwp6-att/R2_022_2_report.pdf

64.4%の事業所が「サービス提供事業所が多い場合、交付に時間がかかる」と回答しています

原案通り、担当者会議が進めば、そのまま事業所にプランを交付できる場合もあるのでしょうが、手間がかかるということは事務所に戻り、FAXしている感じでしょうか

FAXは実は当たり前のツールになっていますが、時間的な労力がかかるアナログな作業です

事業所間の書類のやりとりはICT化が進んで、介護ソフト間やクラウドサービスで共有などできると効率化が進むと思いますが、介護支援専門員の高齢化も進んでおり、ICT化アレルギーもあるようです

報告書の中では個人情報の面も課題になっているようです

暫定プランの現状

事業所全体の1年間の暫定ケアプラン作成対応のためのサービス担当者会議の開催回数について、「5回以下」または「6~10回」と回答した事業所があわせて 57.5%であった。

暫定ケアプランに関する業務の簡素化についての意見では、「内容に変更がなければ本プランと一体で基準を適用することを可能とすることが望ましい」と回答した事業所が83.0%であった

株式会社 三菱総合研究所 居宅介護支援における業務負担等に関する調査研究事業報告書 URL:https://www.mri.co.jp/knowledge/pjt_related/roujinhoken/dia6ou000000qwp6-att/R2_022_2_report.pdf

今回の通知で暫定プランと本プランの一体的取り扱いについては整理されています

新人ケアマネージャーの時に仕組みの理解にまず苦しんだのが、暫定プランの取り扱いです

介護プランで暫定プランを立てたら、要支援認定になり、要支援プランを作り直した等はよくあると思います

地域包括支援センターや自治体によって暫定プランの扱い方が違うこともあります

そして、暫定プラン、本プラン共に交付後、事業所にFAXするため、とても負担感の多い業務といえます

医療機関との情報共有

ケアマネジメントプロセス全般において医療機関との情報共有における問題点や負担が大きいことについて、診療所・病院に対して最も回答が多かったのは「医療機関側に時間をとってもらうことが困難である」で、それぞれ 46.8%と 67.9%であった。二番目に回答が多かったのは、診療所に対しては「時間や労力が大きい」の 39.2%であったが、病院に対しては「主治医とコミュニケーションを図ることが困難である」の 67.8%であった。
医療機関との情報共有における工夫については、診療所、病院両方に対して最も回答が多かったのは「利用者の受診時に同行し、主治医と面談している」が約6割であった

株式会社 三菱総合研究所 居宅介護支援における業務負担等に関する調査研究事業報告書 URL:https://www.mri.co.jp/knowledge/pjt_related/roujinhoken/dia6ou000000qwp6-att/R2_022_2_report.pdf

医療機関との連携については困難さを感じているケアマネージャーも多いと思います

診療所はそれぞれの対応があり、医師や受付の看護師のことを知っていればスムーズですが、初めての場合は、嫌な緊張があります

病院の相談員にどこまで相談していいかも、相手も忙しいので、何気に神経使いますよね

また、診療所、病院両方に対して「利用者の受診時に同行し、主治医と面談している」が約6割というデータから今回法改正にて受診付き添いの加算算定がついた感じです

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ケアプランの軽微な変更への取り組み

「軽微な変更」に該当するかどうか、事業所として判断ルールの設定状況をみると、「定められていない」事業所が 53.5%で、「定められている」よりやや多かった

株式会社 三菱総合研究所 居宅介護支援における業務負担等に関する調査研究事業報告書 URL:https://www.mri.co.jp/knowledge/pjt_related/roujinhoken/dia6ou000000qwp6-att/R2_022_2_report.pdf

軽微な変更への基準は今までもありましたが、軽微な変更について市町村に確認すると、市町村によって返事が違う等はよくある話です

法定研修の際、他市町村のケアマネジャーさんと話した際、仕組みの違いを感じます

今回、報告書を元に軽微な変更についての通知が改めて出されています

また、要点は記事でポイントをまとめています

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ケアプラン原案作成時間

ケアプラン原案の作成に要する時間の平均については、「平均的な場合」は約 71 分「特に時間を要する場合」は約 120 分であった。特に時間を要する場合については、「生活全般の解決すべき課題(ニーズ)が多い」が 77.6%と最も多く、次いで「援助目標や援助内容が多い」が 65.1%であった。
第3表「主な日常生活上の活動」にどのようなことを記載しているかの詳細については、「利用者の起床や就寝、食事、排せつなどの平均的な1日の過ごし方」の回答が 90.5%であった。
ケアプラン原案作成に関する問題点や負担が大きいことについては、「書類の作成や書類のやりとりの量が多い」との回答が 78.6%と最も多く、次いで「サービス提供事業所を探すのに時間がかかる」との回答が 51.2%であった

株式会社 三菱総合研究所 居宅介護支援における業務負担等に関する調査研究事業報告書 URL:https://www.mri.co.jp/knowledge/pjt_related/roujinhoken/dia6ou000000qwp6-att/R2_022_2_report.pdf

プラン原案に71分以上はかかり、特に時間を要する場合は120分というのは2時間ですから、かなりの時間です

プラン原案に取り掛かる前に利用者・家族との合意形成、アセスメント入力、サービス事業所選定、サービス事業所への情報提供等あります

デイサービスの体験利用の場合は数か所に情報を送り、調整し、体験利用後は利用者、家族に感想や意向を確認することになります

また、プラン原案を元にした担当者会議でチームで新たな支援方針ができた場合は、プランを修正加筆することになります

こうしてアンケート結果から業務を見てみると、かなりの業務量であることを改めて感じます





まとめ

以上、介護保険最新情報Vol.977 「居宅介護支援における業務負担等に関する調査研究事業(令和2年度老人保健健康増進等事業)」の報告書について(WAMネットにリンク)のアンケートの結果のポイント抜粋でした

今回法改正にて業務の効率化が図られた面もありますが、医療連携や地域包括ケアシステムの兼ね合いで業務が増えた部分もあり、あまり業務が楽になった印象はありません

対人援助職であるケアマネージャーが事務処理に追われて、本質的な仕事に時間を割けないような環境は本来あってはならないですが、アンケート結果から現実にはそのような環境になっていると言わざるを得ないかもしれません

ICT化は効率性が高く、ケアマネージャー自身も慣れていく必要はあるかもしれませんが、今後、生活困窮な世帯、高齢者、独居世帯の支援が増えていく中でケアマネージャーを重要な役割に据えるのであれば、処遇的な対応や実務的な対応にも本腰を入れてほしいものです

最後までお読みいただきありがとうございました

 

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